消費者庁が所管する独立行政法人の国民生活センター(以下、「国セン」と略)は、この2019年8月、「『お金がない』では断れない!きっぱり断りましょうーー断っても借金させてまで強引に契約を迫る手口にご注意を」という注意喚起の発表を行ないました。いったいなぜなのでしょうか。「お金が払えない」などといって断っている消費者に、借金をさせたり、クレジットを組ませたりして、強引に契約を結ばせる手口が増えているからだということです。
そうした手口が特定できた相談件数は、2016年が562件、17年が589件、18年が642件と、年々増えてきます。今年4月~7月末の相談件数は195件で、これも前年同時期比で71件増えています。
「国セン」発表の悪質事例
国センによると、こんな事例がありました。ある消費者が大学の友人から投資関連のソフトについて勧誘を受けたさい、約50万円と高額だったことから、「お金がない」と一度断りました。
ところが、その友人は「みんな借金して契約している。儲かるからすぐに返済できる。留学するためとウソをつけばいい」と、さらに強引に勧誘しました。その消費者はとうとう断りきれず、貸金業者から借金し契約を結んでしまったのです。
これ以外にも、「支払い困難と伝えたが個別クレジットの分割払いでエステ等複数の契約をさせられた」「『借金してでもやった方がいい』と言われ、貸金業者の店に連れていかれ、お金稼ぎに関する情報商材の契約をした」といった事例が紹介されています。
その他にも、「断っている人に強引に勧誘している」「ウソをつかせて契約させるなど、問題のある借金・クレジット契約をさせている」「資金力がない人に対して勧誘を行っている」「支払いきれないほど高額な契約をさせる」といった事例を紹介したうえで、国センは、「深刻な相談事例が寄せられている」と指摘し、今後も問題視していくと強調しています。
法規制の強化の可能性も
断っている人を強引に勧誘すれば、特定商取引法の再勧誘規制に抵触する可能性があります。また、17年12月には連鎖販売取引などについて、①消費者の意に反してATMなどに連行する行為、②クレジットや借入の申し込みの書面で支払い能力を虚偽申告させる行為、③クレジット・借入・預貯金引出などをさせるため、「迷惑を覚えさせる勧誘」をする行為ーー等々が、特商法違反に当たることが明示されました。
つまり、「お金がない」と言っている人を強引に勧誘することは、いろいろな意味で違法行為に当たる可能性があるのです。
国センのような行政機関が今回のような発表をするときには、裏の意図が隠されている場合があります。つまり、借金やクレジット契約にまつわる不正勧誘に対する法執行が強化されたり、法規制のさらなる強化が議論されたりする可能性があるのです。「強引な勧誘はしない」ということを、常日頃から心がけましょう。