適宜適切な水分補給でストップ!認知症

“水のホメオスタシス”を正常に働かせるためのキーポイント

 私たちは脱水になった時、体内の水分バランスをどのように調整するのでしょうか。脱水状態になると血液が濃縮し、それを薄めようと口中が渇きを覚え、飲水によって脱水症状から抜け出ようとします。

 もう少し医学的に説明すると、内分泌や自律機能を司る脳の視床下部が脱水を感知し、バゾプレシンというホルモンを分泌して腎臓からの水の排出を減少させ、脱水を抑えようとするのです。

 この身体の自律的な調整機能のことを、水のホメオスタシスと言います。しかし、水のホメオスタシスがうまく働かず脱水が続くと、脳の神経細胞の機能に障害が出たり、脳萎縮や慢性的な脳血管障になったりして、高齢者に多い認知症やパーキンソン病が早期に発現する原因となり得ることが分かっています。

 このホメオスタシスがうまく働かない原因としては、加齢による腎臓の機能の低下や、筋肉量の減少及び脂肪の増加、パゾプレシンの分泌の変化があげられます。

 つまり加齢とともに水のホメオスタシスが脱水側にシフトしてしまうということです。このため知らないうちに慢性脱水になってしまう危険性が高くなります。

高齢者が脱水しやすい理由

 2020年10月、名古屋大学が老人介護施設の入所者の慢性脱水について調べた結果を発表しました。それによると、入所者の慢性脱水のリスクは高いとのことです。

 老人介護施設には認知症の患者さんや自分で水分摂取できない入所者が多く、先に述べたホメオスタシスが脱水側に傾いています。そのために喉の渇きのセンサーが鈍ってしまっていることが、脱水の要員の一つになります。

 このように高齢者は水のホメオスタシスが脱水側にシフトしているため、慢性脱水になりやすくなります。それが続くと脳細胞に影響が出て認知症が発症します。認知症になると水を飲むことを忘れたり、いつ飲んだのかを覚えてなかったり、さらには水を飲むことが困難になったりします。するとさらに慢性脱水が進みます。悪循環に陥るというわけです。

認知症と脱水の相互作用

 2018年のイタリアでの報告ですが、アルツハイマー型認知症の患者は脱水になっていることが多く、また逆に脱水がある場合、認知症が発症するリスクがあるということでした。さらに65歳から75歳で認知症の患者は、76歳から85歳の認知症のない高齢者よりも高い脱水状態になっていました。

 脳の約75%が水分で構成されています。そしてその水はアストロサイトという神経細胞に貯蔵されています。脱水になるとこのアストロサイトにいつもより水を溜め込むように水のチャンネルが開きます。

これに関連して、16時間、水分を摂取しないままでいると、脳の容積が平均0.55%減少し、水分を補給すると平均0.72%増加した、という報告があります。その差はわずか0.17%で、要するに水を溜め込んでいたために非常に少ない変化でした。

 アルツハイマー型認知症では、アミロイドベータというタンパク質の塊が脳の中に蓄積すると言われています。アミロイドベータは元々脳を守るためのものですが、溜まってしまうと認知症などの病気の原因になります。

 このアミロイドベータを蓄積させないためには、アストロサイトに貯蔵された水が適切に循環することが極めて大切です。この循環を促すのは、適切に摂取する水分、そして良質な睡眠です。

 では、慢性脱水状態になっているかどうかの判断は、どう下したら良いのでしょう。実は、肌がカサカサしている、舌が乾いているという兆候は慢性脱水の指標にはなり得ません。また、血液検査で一般的に使われている指標も使えません。これらは全て急性脱水の時の指標なのです。

 困ったことに慢性脱水になると高齢者に多い貧血も、採血データでは正常あるいは少し貧血気味ぐらいに判断されてしまいます。ともかく、意識して水(もちろん還元水!)を飲むことが、とても大切になります。

 ただし高齢者の場合、知らないうちに腎臓機能が悪くなっている人が多いので、体調の変化にも気をつけ、少しずつ適当な量に分けて飲むようにしましょう。

脱水と肥満の深い関係

 それにしても、女性で慢性脱水の人に肥満傾向が多いのはなぜでしょう。人は脱水時に腎臓の機能を制限し、出ていく水を少なくします。その状態が続くと、それが定常になって水を正常より溜め込もうとし、体重の増加に結びついてしまいます。

 女性の場合、もともと男性に比べて脂肪が多く、水の貯蔵庫である筋肉が少ないため、肥満傾向になると、男性よりも相対的に身体の水分が少なくなるため慢性脱水になりやすいのです。

 ところで「わたしは水を飲んでも太るんです」っていう話を聞いたことはありませんか?これは慢性脱水になっているのであれば、あり得る話です。通常、尿として排出されるはずの水を、(慢性脱水の)緊急事態として溜め込もうとするのですから、その結果として体重が増えるのです。

 女性なら気になる足首の太さは、肥満ではなくて水で浮腫んでいるのかもしれませんよ。

 ここまで読んだら気づかれたと思いますが、慢性脱水を防ぐために必要なことは、水を飲むだけでなく、水の貯蔵庫である筋肉もしっかりと維持することです。それがすなわち認知症の予防にもつながります。