お米を炊く水の比較実験をしてみた!

還元水、水道水、酸性電解水の3種類の水で米を炊いた結果は?

 わたしたちが毎日食べるご飯ですが、日本の米作付面積のうち最大(約三分の一!)も占める品種のコシヒカリを始め、何と800種類以上もの銘柄があります。したがって炊飯時には、銘柄により水に浸す時間や水の量も少しずつ変わるでしょう。それだけでなく、使う水によっても変化するし、味も変わるはずです。
 そもそも炊飯前のお米の水分は1 5 %で、洗ってしばらく浸しておくと、約1 0 ~ 1 5%の水を吸収します。さらに炊き上がったご飯になると水分は60%に増えます。
 お米を洗う時は適当に水道水で、炊く時にはお気に入りの水を使っている人もいるかもしれません。でもわたしは、洗う時からどういう水を使うのか、考えた方が良いと思っています。
 では実際に、いろいろな種類の水でご飯を炊くとどうなるのでしょうか。まずは電解水でご飯を炊いた時の変化に関する研究結果をみてみましょう。
■各種の水の炊飯米を食べ比べ
 最初は一般社団法人・日本家政学会が発行している『日本家政学会誌』( 1 9 9 4 /Vol.45 No4 343~348)に報告された共立女子大学家政学部の佐藤らの研究結果です。ここでは、電解水( p H 3 ~ 1 1 )が炊飯米の性状にほとんど影響を与えないと報告しています。
 具体的には、炊飯米の色、硬さ、付着性でほとんど差はありませんでした。実際に2 0 歳の女性4 5 人に酸性電解水、原水、アルカリ性電解水( 還元水)で洗って炊いたご飯を食べてもらい、形状、色、味、硬さを原水で炊いたものと比べて良いか悪いかを評価してもらいました。その結果、電解水(酸性、アルカリ性)での評価は低い傾向になりました。
 その原因としては、電解水で洗米しても、当初は酸性あるいはアルカリ性になるものの――米粒が水のp Hを緩衝する作用があるため―― 5分以内に中性になって水の性質の差が反映されないからではないかと考えられました。また米の水分含有量も炊飯時に差がありませんでした。
■電解水の炊飯で米粒に変化は?
 この結果を受けて、公益社団法人・日本食品科学工学会が発行する『日本食品科学工学会誌』(1996/第43巻 第8号 930~938)に、小林らが研究結果を報告しました。
 小林らは酒造用原料米の品質調査に用いられる方法などを用いて、より小さな変化を計測することで電解水の炊飯特性を検討しています。
 白米を浸漬した時の総体積変化は、アルカリ性電解水>原水>酸性電解水の順に減少しました。
 水酸化ナトリウムと塩酸で同じ実験をしても同様の結果となり、p H の高い水が白米の膨潤を促進させることが示唆されました。
 次に炊飯後の米の体積の変化で吸水量を測定したところ、アルカリ性電解水、原水、酸性電解水の順で高くなりました。
 炊飯米の面積を画像解析で計測すると、アルカリ性電解水、酸性電解水、原水の潤に大きくなり、アルカリ性のものは原水より4 . 5%面積が大きい結果が得られました。
 ご飯の硬度は洗米時の水のp H が高いほど硬く、粘り気はp H が高いほど低くなりました。新米は古米よりも吸水量が大きく、これがご飯の品質に関連していることが分かっています。
 美味しさや食感に関わるのはでんぷんです。一般にでんぷんはアルカリ性で膨潤糊化することが知られています。
 アルカリ性電解水に多く含まれている水酸化イオンとナトリウムイオンや、酸性電解水に多く含まれている塩素イオンもでんぷんの糊化を促進します。個人差はありますが、でんぷんによってより美味しさを感じるかもしれま
せん。
■非電解水のアルカリ性水で炊くと
 引き続き、電解水以外のアルカリ性の水で洗米をした研究があったので紹介します。
 2020年に一般社団法人・日本調理科学会発行の『日本調理科学会誌』(2020/Vol.53,No5344~351)に、女子栄養大学の柴田らが、ホタテ貝殻焼成カルシウムを用いた洗米が貯蔵米の食味に及ぼす影響について報告しています。
 ホタテ貝殻焼成カルシウムは水に溶かすとpH12の強いアルカリ性の溶液になり、天然の殺菌、抗菌作用を有する素材として野菜の洗浄などに使われています。
 この研究では、①古米を普通の水で5回洗米したものと、②ホタテ貝殻焼成カルシウムを溶かした水で2回、さらに普通の水で3回洗米したものの2種類を比較しています。
 洗米前と洗米後の米を走査電子顕微鏡で観察したところ、①の場合、洗米前は糠で覆われていた表面が洗米で除去され、細胞壁やでんぷん粒が確認されました。②では若干、①よりもきれいになっている程度の変化でしたが、脂肪酸度の測定では有意に低下していました。これにより古米臭に変化が生じました。
 というのも、味覚及び嗅覚試験に合格した11名が評価したところ、最大45%の臭いの減少を認めたのです。この臭いの成分はヘキサナールなどのアルデヒドなどと考えられています。
 これは脂肪酸のリノール酸が酸化して生成されるものですから、洗米で脂肪酸が減って臭いが軽減したと考えられます。
 もう一つ、ホタテ貝殻焼成カルシウムの後味に甘味があるのですが、そのためにご飯の甘味も増
したという結果も得られました。
 同様の報告が『日本食品科学工学会誌』(2004/Vol51, No11 585~591)に竹炭浸積液を利用したケースとして掲載されています。
 わたしは以前、炊飯用の水を水道水から浄水に変えた時、ご飯の味が激変したのにびっくりしました。お米のせいじゃなかったんだ、お水が大事なんだと気づいた最初でした。そしていまはもちろん還元水を使っていて、より美味しくいただいています。
 最後に誤解している人も多いと思うので付け加えておきます。還元水で洗米すると水が黄色くなりますが、これは米の植物色素フラボノイドがアルカリで黄色く変化したものです。

上古眞理 略歴:
医学博士。エナジックインターナショナル顧問。
(株)Peak Health Energy 代表取締役。1990年、滋賀医科大学卒業。
同大内科医局の研修を経て93年、同大医学部大学院に進み、96年、医学博士号取得。
98年4月より2017年12月まで京都岡本記念病院に勤務。
18年1月より19年12月まで彦根市立病院勤務。
専門は神経内科。滋賀県在住。