外に向かって吹く風――本格化する社会貢献の取り組み

 エナジックのグローバル化は関数的な勢いで進んでいる。このトレンドはまだまだ続くであろう。国内での管理とグローバルの管理とは次元が違う。たとえばアジア・ブロックの言語、文化、宗教、法体制は、多種多様、複雑である。内側の管理体制を固めながら、外側の管理体制も固めていく必要がある。

 拡大していくグローバル管理は、どれだけ経験を積んだ人であっても一人でできるものではない。小さなお店の管理のようにはいかない。ますますグローバル化するエナジックの管理は、大城一人では限界がある。成長とサクセスをめざすグローバル化は、社内の管理者たちが大城と共に立ち上がり、右から左から支えて拡大していくのではなかろうか。

 言うまでもなく、世界の販売店からの情報収集は大きな財産である。新市場の開拓にエネルギーを注ぐと同時に、社内の管理体制にも目を投じていかなければならない。社内の一致団結と、そのうえで、前号で示した「内堅外広」(内側を固めて外に広げる)の取り組みが必須だ。

未来をどう創造するのか

 高名な経営学者のピーター・ドラッカーは「未来を予測する最良の方法は、未来を創ることだ」という名言を残した。では大城は、エナジックの未来をどのように創りだそうとしているのか。

 二十数年前であったか、ここロスアンゼルスでもNHKの『琉球の風(DragonSpirit)』という大河ドラマが放映された。16世紀末から17世紀にかけて薩摩藩に支配された琉球王国を描いたものである。平和な琉球が描かれ過ぎて、ドラマとしての起伏が足りなかったという巷の評価であった。当時の琉球は一体、どんな風をどこに向けて吹かせていたのだろうか。

 そのドラマを想起すると、では大城は、これからどんな風を吹こうとしているのか、という思いにとらわれるのである。すると、風になびかせられながら、次のような事柄が浮かんでくるのだった。

 大城は事業のサクセスと共に、外に目を向けはじめた。これからもっと規模が大きくなるであろうが、すでに社会への還元を開始している。いわば外(社会)に向かって風を吹き始めているのである(当然、エナジック・ビジネスのグローバル化を進める、という「別の風」の企業努力との両立が前提だが)

 いずれにしろ、地域社会に貢献し社会的責任を果たしてこそ真の企業家である。以下では、公に開示された情報を踏まえ、また、筆者の期待も添えて幾つかの「外に吹く風」(社会貢献の実例)を紹介する。

高齢者ケア施設の運営に乗り出す

 大城の生家からそう遠くない地域(名護市字親川)に高齢者ケア施設「瑞穂の郷」(みずほのさと)がある。わたしは真夏の沖縄のうだるような炎天下にこの施設を訪れた。緑の畑に囲まれた五階建ての建物だ。エアコンの効いた施設内に案内され説明を受けた。「瑞穂の郷」は数年前に開設、当時、44人の収容能力の小さな規模だった。

 特別養護老人ホーム、短期入所生活介護、デイケア、居住介護支援といったさまざまなサービスを提供している。スタッフはパートタイマーを含めて38人という。入所者とはおおよそ一対一の比率で、行き届いたケアを提供しているのであろう。地域のニーズは大きく、200人以上の希望者が入所を待っているとのこと。

 施設の一部を見学したが、103歳のおばあちゃんを筆頭に、90歳以上の高齢者の方々が介護を受けていた。デイケアのおばあちゃんがテレビを楽しんでいる。利用者料金も比較的低く、地域の需要が強い。しかし、このような引退者ホームの共通の悩みは財政の問題である。将来の拡張計画も合わせて、直面する財政の改善は「瑞穂の郷」が緊急に取り組まなければならない課題であった。