前号に引き続き、エナジックが「外に向かって吹く風」として、力を入れている社会貢献事業のうち、「瑞穂の郷」と「硬式野球部」を取り上げてみる。
大城は2014年3月から特別養護老人ホーム「瑞穂の郷」に関わるようになり、財政の立て直しを買って出た。手始めに、社会福祉法人「水寿会」を立ち上げ、エナジック社がバックアップすることになったのだ。このような高齢者を対象とした社会貢献は大城にとって初めてのことだった。
わたしは前に「瑞穂の郷」を訪問したことがあるが、その帰りがけに、大城が生母から受けた「人への情けの教え」を語っていたことが脳裏をよぎった。亡くなられた母親の姿が、施設にいるおばちゃんたちと重なって見えたのかもしれない。
以前、筆者は大城の別荘に数日厄介になったことがある。この地域には珍しく、ゲートにセキュリティーが取り付けてある。広々とした二階建て、調度品も高級だ。一望できる緑の田園、その向こうに静かな太平洋が広がる。
だが大城がこの別荘を利用するのはそう頻繁にはないようだ。彼と会話を交わす中、大城はふとこう言った。「この家はあまり使わないので、村の高齢者のデイケア施設にしようかな」と。「まさかこの別荘を!」と耳を疑う発言だったが、高齢者への温かい思いやりの中に、大城の親への深い思いを垣間見た気がした。エナジック社が「瑞穂の郷」の後押しに乗り出したのは、決して偶然ではないのだ。
若者に夢を――硬式野球部を創設!
長寿県沖縄は、一年を通してスポーツが楽しめる天候に恵まれている。年中、練習や試合ができるのだ。
ちなみに沖縄県はプロ野球のキャンプ地として知られている。シーズン前の2月には、毎年、約10チームがやって来て、練習に励み、その見物のために県内外から多くの人たちがわざわざ訪れて来るのだ。この熱気の背景には、日本人の野球好きがある。何といっても日本では野球がもっとも人気があり、老いも若きも小さな子どもたちも野球を楽しんでいる。
そうはいっても、以前は会社ごとの職域野球チームが多くあり競い合ったが、近年、沖縄ではチーム数が減った。名称も社会人野球となり、エナジック硬式野球部は県内わずか6チームの一員である。
社会人野球は企業チームだ。チーム数減少の理由は野球部に当てる予算の問題だ。企業チームは会社の社員として働きながら練習をおこなう形をとる。エナジック野球部の場合は午前に練習し、午後は業務に就く。それぞれが会社で働きながら上達を目指し、プロの世界を夢みて励んでいる青年たちもいる。公式戦は年に7~8回あり、これまでの成績はまあまあと聞いている。
エナジック野球部がチームとして発足したのは2009年である。沖縄では野球人口が多く人気があるだけに、エナジックチームの存在は付加価値を生み、企業のイメージアップにも貢献しているのだろう。
発足に先駆けて2008年10月、大城は記者会見でチーム作りの動機をこう語った。「沖縄出身として地元のために何ができるかを考え、小中高で沖縄県の野球は全国トップレベルでありながら、卒業後の受け皿が県内にない。野球を通じて青少年に大きな夢を与えたいと思い決断した」と。大城は老人福祉にとどまらず、次代を担う若い世代にも貢献しているのである。