食中毒の危険因子を除去する酸性電解水!

酸性電解水に含まれる次亜塩素酸が有効に働くメカニズムを解説!

 日本の夏は、もはや熱帯かと思わせるほど猛烈な暑さが常態と化しました。そんな季節に生活していくうえで、最も神経を使うのが食中毒対策ですね。その対策に有効なのが酸性電解水です。今回は食中毒対策に重点を置いて、酸性電解水の性質や有効性を説明してみます。安心安全な食生活をおくるため、少しでもお役に立てるとうれしい限りです。
 (社)日本食品衛生協会が発行している『食と健康』という冊子の2002年4月号に、「新しい殺菌料・酸性電解水」という特集が掲載されました。
 執筆は厚生労働省医薬局・食品保健部基準課です。この年の6月10日に、酸性電解水が食品の殺菌を目的に使用できる食品添加物として認められました。そのことを見通して執筆された記事と思われます。以下は、その記事+3
点の論文を参考に記述しました(出典などは文末で紹介)。

■食中毒の「予防三原則」とは?

 食中毒の予防対策として大切なのは、①食品 への汚染を極力防ぐ、②細菌に増殖の機会を与えない、③細菌を殺す、という方法で、これをまとめて厚労省は「予防三原則」と言っています。
 強酸性電解水(pH2.7以下)、弱酸性電解水(pH2.7~5.0)、微酸性電解水(pH5.0~6.5)を合 わせた酸性電解水は、三原則の③に有効な食品添加物です。厚生労働省は「次亜塩素酸水」と呼んでいますが 、もちろん酸性電解
水と同じものです。
 なお酸性電解水は生成直後に使用しないと有効性が失われるため、ペットボトルに入れて販売するなどは不可、という意味のことが官報に明記してあります。
 次亜塩素酸水と似た言葉に次亜塩素酸ナトリウムがありますが、これは漂白剤によく使われ 、殺菌にも使用されてきました。次亜塩素酸水(酸性電解水)も次亜塩素酸ナトリウムも、殺菌に有効なのはこれらに含まれている次亜塩素酸ということになります。
  違いは、酸 性 電 解 水には次 亜 塩 素 酸 が 分子型で溶けているのに対し、次亜塩素酸ナトリウムでは主にイオンの形で溶けている点です。殺菌力は分子型が強く、有効塩素濃度は10から60ppmで、次亜塩素酸ナトリウムでは100から200ppmの濃度が必要です。

■どんなウイルスや細菌を殺すのか

 ではこれらはどれくらい殺菌力があるのでしょうか。有効塩素濃度40ppmの強酸性電解水と有効塩素濃度1000ppmの次亜塩素酸ナトリウムでは同等の殺菌力があり、以下のような結果が得られています。
 黄色ブドウ球菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球 菌( M R S A )、大 腸 菌( O – 1 5 7 )、緑 膿菌、サルモネラ、腸炎ビブリオなどでは5秒以内に、結 核 菌は2. 5 分 弱 、ヘルペスウイルスとインフルエンザウイルスは5 秒 以内に殺 菌されます。
 ちなみに皆さんの関心が深い新型コロナウイルスに関しては、2020年6月にエナジックスポーツ高等学院長で北海道大学名誉教授の玉城英彦先生らが有効塩素濃度40ppmの強酸性次亜塩素酸水(pH2.7)と微 酸 性 次 亜 塩 素 酸 水( p H 5 . 5 )で 実 験をして、いずれも30秒以内にウイルスが不活化したという報告をしています。
 次亜塩素酸ナトリウムは強アルカリ性で毒性がありますが、酸性電解水に毒性はなく手荒 れもありません。ただし、強 酸 性 電 解 水は次 亜 塩 素 酸 濃 度 が 高いので、大 量に使う場合は換気が必要になります。また泥や有機物
で汚 れていると酸 性 電 解 水の有 効 塩 素はすぐに消失します。貯めておいてもすぐ消失するため流しながら使うと効果的です。
 強酸性電解水を使用して殺菌する場合は、電気分解したアルカリ側の水、つまり強還元水で洗ってから強 酸 性 電 解 水を使うのが 効果的です。

■ヒトは体内で次亜塩素酸を生成?

 そもそも酸性電解水が殺菌作用を起こすメカニズムは、実は体内のメカニズムと一緒ということが
わかってきました。
 白血球の中の好中球は細菌やウイルスなどが体に入ってくるとそれを取り込みます。すると次に、活性酸素の一種で酸化力が高いスーパーオキシドが生産されて攻撃を仕掛けますが、非常に短寿命です。しかし多くのスーパーオキシドは過酸化水素になり、塩素イオンと反応して次亜塩素酸になってさらに攻撃をします。
 つまりこれは、細菌を攻撃するために身体の中で次亜塩素酸が作られていることになります。わたしたちの体が健康な状態であれば、少々の細菌やウイルスが入ってきても、この好中球がやってきてやっつけてくれるわけです。わたしたちが病原菌に感染すると白血球は正常の倍以上に増えて攻撃をするのですが、体が弱っていると白血球が十分に増えません。
 最初に示した、食中毒予防の三原則の②「細菌に増殖の機会を与えない」というのは、一般的には食品の温度管理やpHの調整などで細菌の増殖を抑制することを指します。同時に、わたしたちの体のバリア機能をしっかり保つことも、増殖抑制の方法と言えるのではないでしょうか。白血球がしっかりと働く身体作りが大事です。
 わたしたちは体の細胞数以上のさまざまな常在菌と共に生きています。それによって健康を維持しています。常在菌まで殺してしまうと逆に健康を損ねることになります。
 2021年6月から食品を提供する側にHACCPが義務付けられました。これは汚染や異物の混入などの危害要因を重点的に監視し、最終製品が安全であることを確認する衛生管理システムで、最初のHはハザード(危険や障害)を意味し、具体的には食品に含まれ食中毒を起こす菌やウイルス、寄生虫を指します。
 こうした危険因子を除去するために酸性電解水が活用できる、ということがわかっていただけたと思います。

【参考文献】

『食と健康』2002年4月号pp12-17
『日本集中治療医学会雑誌』2000年第7巻2号
pp97-105
『機能水研究』2010年Vol.5(1) pp1-8
『上原記念生命科学財団研究報告集』2018年Vol.32