強還元水の抗菌能力を実験してみたら……!!

新型コロナウイルス等の殺菌に強還元水は果たして有効か?!

 わたしたちはウイルスや細菌のようなたくさんの微生物と共生しています。微生物がいないと健康を保てないこともわかってきています。しかしながら有害な細菌やウイルスだけを除去する、という好都合なものは存在しません。一方、菌を著しく減少させる能力を持ちながら、環境に優しく、人体に悪影響が限りなく少ないものとして強酸性電解水があげられます。
 さらに強酸性電解水を作る時に陰極側で生成される強アルカリ性(pH10.5~11.5)の電解水(強還元水)は有機物の汚れの除去に適しています。強酸性電解水で何かの除菌をする場合、そこに有機物が多く付着している時には、まず強還元水で処理してから強酸性電解水を使うのが有効な方法です。強酸性電解水の殺菌力を低下させないためです。


■感染症の6割がウイルス由来

 2 0 2 1 年1 0月に、生物学研究の諸分野のタイムリーで重要な研究結果を紹介している学術誌『Biochemical and Biophysical Research Communications』に、強還元水によって新型コロナウイルスや大腸菌に代表されるグラム陰性菌などを効率的に不活性化した、という論文が発表されました。
 これは大阪医科薬科大学微生物教室の鈴木らが他の施設と共同して実施した研究です。
 感染症の原因の6 0 %がウイルスによります。感染症の中で最も多い疾患は気管支炎や肺炎のような呼吸器系と、腹痛や嘔吐、下痢などを起こす消化器系です。
 ところで毎年冬になるとインフルエンザが流行していました( 例外は沖縄県で夏にも流行していました)。これは呼吸器系にも消化器系にも症状が出るウイルスです。自然界や動物の腸内に存在するレジオネラ菌やサルモネラ菌が人に感染することもあります。
 2 0 2 0 年から新型コロナウイルスが世界的に流行したことで、感染症の予防、消毒について今まで以上に注目されるようになりました。鈴木らの研究では、室内の空気や物質の表面の消毒に使うものとして強還元水が環境に優しい消毒剤にならないかを検討しています。


■多種類の細菌・ウイルスで実験

 酸性電解水の抗菌効果についての研究は数多くあり、次亜塩素酸が作用していることが知られています。次亜塩素酸の塩素濃度は低くても塩素臭が気になることがあります。
 鈴木らの実験で使用された強還元水は、水道水を逆浸透膜で不純物を取り除いた後に電解質として食品用炭酸リウムを使って電気分解し作成されました。
 この時に原水の流量を少なくすることで規定値より高いp H 1 2 . 5 ( ± 0 . 3 )の生成を実現しました。その酸化還元電位( O R P )は- 7 0 0から- 9 0 0 m Vで、溶存水素は4 2 3 p p bときわめて強いアルカリ性となっています。平均p Hは密閉時が1 8 0日、放出時は4 8日以上、一定に保たれました。
 実験は、新型コロナウイルスに感染した患者から入手した臨床分離株を用いておこないました。1 0 倍量の強還元水で2 分間処理したものを細胞に接種し、4 8 時間培養しました。そして、培養液から細胞や不純物を取り除いた上澄みの部分(培養上清液)からRNA(リボ核酸)を抽出してウイルスがどのくらい複製されるかを測定しました。
 すると、強還元水で処理した細胞が約1 0 0個の複製に対し、滅菌水で処理した細胞は約1千万個の複製が確認されました。
 次に新型コロナウイルスを強還元水と一緒に3 0 秒から5 分培養しました。すると3 0 秒後には滅菌水で培養をおこなった培地ではプラークが形成されましたが、強還元水で培養をおこなった培地ではプラークは観察されませんでした。
 プラークとはウイルスに感染して細胞が壊れてはがれることによりできた穴のことで、ウイルスの数が推定できます。プラークが観察されなかった強還元水は、滅菌水より効果アリといえるわけです。


■還元水の有効性と安全性を証明

 細胞への新型コロナウイルスの侵入及び結合についての実験もおこないましたが、どちらも強還元水で処置をすると、侵入の度合いは有意に低くなっていました。
 同様に、A型インフルエンザウイルス、単純ヘルペスウイルス1型、ヒトコロナウイルス、ネコカリシウイルス、イヌパルボウイルスに対してウイルスの不活化が見られるか、という実験をしましたが、いずれも強還元水で有意に不活化することが認められました。
 さらに、グラム陰性菌である、大腸菌、サルモネラ菌、レジオネラ菌を強還元水で30秒から15分処理した後、35℃で2日間培養しましたが、大腸菌とサルモネラ菌は30秒処理の検体で検出感度以下、レジオネラ菌は300秒処理の検体で検出感度以下になりました。
 強還元水の急性毒性の有無についてはマウスで吸入実験をしていますが、異常は認められませんでした。
 また、成人22名のボランティアに強還元水を使って24時間皮膚パッチテストをおこない、3日間観察しました。対照には生理食塩水とワセリンを使用していますが、強還元水の皮膚刺激指数はゼロでした。
 酸性電解水と違い、強還元水は無臭、非腐食性、無刺激です。さらに無色透明で、希釈すると水や塩水に戻ります。また強還元水は長期間、化学的に安定しています。
 この実験では強還元水はいろいろなウイルスやグラム陰性菌の殺菌剤として有効で安全なことが実証されました。
 鈴木らは、今後、特に閉鎖空間での強還元水の散布が空気や環境の除染に適しているかどうかを検証していく、として論文を締めくくっています。
 ここで皆さん、家にあるレベラックでpH12.5の強還元水を作ることができるかどうか興味がわくところだと思います。ちなみにレベラックスーパ-501であれば浄水をせずに電気分解をするので、pH11.3~12の強還元水が作れます。
 原水の量を少なくすればpH12.5に近づけることができそうです。試してみてください。

上古眞理 略歴:
医学博士。エナジックインターナショナル顧問。
(株)Peak Health Energy 代表取締役。1990年、滋賀医科大学卒業。
同大内科医局の研修を経て93年、同大医学部大学院に進み、96年、医学博士号取得。
98年4月より2017年12月まで京都岡本記念病院に勤務。
18年1月より19年12月まで彦根市立病院勤務。
専門は神経内科。滋賀県在住。